置き土産


575 名前:名無しの霊体験[sage] 投稿日:2015/08/07(金) 00:20:24.16 ID:t7tovEtCs
暑くて眠れないので、投下する。
外伝4あたりに書いた自殺した親父の置き土産の話。
また夢が出てくるので、嫌いな人はとばしてほしい。

親父が亡くなって数年後の11月のある日、明け方
に何度目かの夢を見た。もちろん、親父のだ。
玄関から当たり前のように入ってきた親父は、亡く
なった時と同じ服装で。
それを見て、ああ、またか、と思う間もなく、部屋
の四隅から犬と猫が入ってきた。現われたんじゃな
くて、そこに入り口があるかのように「入って」き
たんだ。
柴犬とサビ猫。
仏壇を挟んで左右の隅から入ってきた2匹は、当た
り前のように親父の左右に座った。
こちらが尋ねるより先に、親父がにこにこ笑いなが
ら、この2匹を置いていくからよろしくと言い出し
た。
犬も猫も飼ったことがないから無理と言っても、親
父はにこにこしてるだけ。
じゃあ頼んだぞ、なんて言い終えるより先に消えて
しまった親父。
いつの間にか自分の前には柴犬とサビ猫が並んでた。
その時はまた変な夢見たなあとしか思わなかったんだ。
 
576 名前:名無しの霊体験[sage] 投稿日:2015/08/07(金) 00:26:50.76 ID:t7tovEtCs
メモから貼り付けているせいか、改行が変だ。
いじらない方がいいのかな。

続き
異変というほど大層なものじゃない、けど、少し変わった体験をしたのは翌月だった。
毎日毎日遅くまで起きていて、その日も二時半近くに寝たんだ。
湯たんぽを入れておいた布団の中は温かくて、すぐ眠りに落ちそう…だったんだけど。
目をつむる自分の足下に集まる気配、布団を踏む何か。
人間にしては足のサイズが小さすぎる、と目をつむりながら窺っていると、ポスンと布団の上から脚に何かが寄りかかった。
二人、いや、動物っぽいから2匹…3匹か。
1匹は湯たんぽの側で丸くなり、1匹は自分の脚に背中を預けるようにしていて、もう1匹は完全に脚に寄りかかってる。
しかも、尻尾の形状からして、狐っぽい。じゃあ、残りの2匹は…と考えを巡らしたところで、親父が連れてきた2匹が思い浮かんだ。
あいつらかー、だったら仕方ないな。寒いんだから、自分より先に湯たんぽに当たってれば良かったのに。
そんなことを思いながら、寝た。
もちろん、その日を境に夜更かしをしなくなったなんてことはないし、3匹の気配+αも一晩だけの不思議な体験ではなかった。毎晩、出てきたわけでもなかったけど。
でも、不思議なことに、親父が柴犬とサビ猫を置いていく夢を見てから、金縛りや変な夢を見ることはなくなった。
まあ、ただの偶然かもしれないが。
 
577 名前:名無しの霊体験[sage] 投稿日:2015/08/07(金) 00:34:18.82 ID:t7tovEtCs
続き
足下で寝ていただけの存在が、こそこそ話をしているのを聞いたのは、翌年の四月半ば。ようやく春が来た頃のことだ。
まだ朝晩は冷えるから、湯たんぽをして寝てたんだ。例のごとく二時半頃に布団に入り、うとうとしていたら、
「どうする?」
「このままここにいるか? それとも…」
話し声と足下の気配。
あの3匹かと思いつつ、寝ようとしたら、右肩をぐっと踏まれた。すごい力で痛かった。
「人間はすぐ裏切るからな」
3匹の内のどの声かはわからない。
耳元から聞こえたその声は、怒りや憎しみより悲しみが優っていた。
だから、瞬間的に思ったんだ。
次は幸せになれって。
そうしたら、右肩が軽くなって…寝てた。
起きたら朝だった。びっくりするくらい何もなく、夢も見ず、目が覚めた。
3匹は2度と現われなかった。

能天気というより、正直生きている自分のことだけで手一杯だから、たまにあんなことがあったなー、今ごろ次のために休んでるんだろうなー、程度にしか思わなかった。

でも。
3匹がいなくなった後、少ししてから自分は実家を出たんだ。
実家は近いからわりと頻繁戻ってる。
それが起きたのは、3匹がいなくなった翌年のGW。ちょうど実家に戻っていた時のことだ。
用事を済ませた自分は、座りながらうとうとしていた。
「10時には起きないと」なんて考えながらも、眠気は強くなっていく。
まずいなあ、そろそろ起きないと思っていたら、タッタッという軽快な足音が聞こえてきた。
方向は仏壇のあるあたり。
で、走る勢いのまま、ドーンと太ももにヘッドアタック。
目は覚めたけれど、ヘッドアタックする生物なぞ実家にはいない。自分も飼ってない。
たぶん、あの3匹のうちのどれかなんだろうな。見えないから、どれかまではわからないけど。
 
578 名前:名無しの霊体験[sage] 投稿日:2015/08/07(金) 00:46:32.00 ID:t7tovEtCs
続き
あれから数年経ったが、あの3匹のうちのどれか(あるいは3匹とも)はまだいる。
昨年、実家からうちに1匹ついてきた。
フローリングの床をカシカシ言わせて歩く音が聞こえる時があるから、間違いない、と思う。
見えないから、気のせいと言われればそれまでだけど。
実家の方も、泊まっても金縛りにはかからないし、たまに感じていた嫌な気配もない。
番犬? 番猫? 番狐?
やっぱり見えないから何とも言えないが、たぶん守られている(?)んだろう。

3匹全てが親父の置き土産(とは表現はあれだが)ではないけど、連れてきて置いていったのに違いはない。
でも、連れてくるのは一度きりにしてほしい…という願いが届いたのか、今のところあの3匹以外に置き土産はない
 

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