祖母と天狗


860 名前:名無しの霊体験[sage] 投稿日:2016/06/15(水) 00:42:17.10 ID:tXpWvryDs
俺の、母方の、祖母の話。
祖母は幼い頃、近所の山に友達と遊びに行った時、天狗さんに遊んでもらったことがあると言っていた。
遊び慣れた山の中のはずなのに、村では会ったこともない、白い装束を着た、知らない大人の男の人に会ったんだそうだ。
祖母の祖父は村でもかなりの偉いさんで、村の男衆は全員が祖母の祖父に挨拶するような家だったから、知らない大人の男が村にいるはずがない。
農村だったから、春の忙しい時期に、白い装束を着て山でふらふらしている男がいるわけがない。
けれども、何故か怖いとは感じず、祖母はその男についていった。「珍しいもの見せてやろうな」と言われたそうだ。
男についていくと、見たこともない滝を見たり、まったく知らない町の景色を山から見下ろしたりもしたらしい。
そのうち、一緒にいたはずの友達が「あの子が急にいなくなった」と大人を呼んで大騒ぎになって山狩り状態になって…
日が落ちて、もうこれはだめかもしれん、となっていた時に、祖母は…気づいたらいきなり家に帰っていたそうな。
祖母の体感ではほんの数十分程度のことで、こんな騒ぎになっていたこともすっかり暗くなっていたこともまったくわからなかったと言っていた。
季節も、春の山に来たはずなのに、夏の花を見たり秋の紅葉の景色も見せてもらったそうだ。
その話を聞いた祖母の祖母は、「そらあ天狗さんだ」と語り、村の大人たちもそれで納得したらしい。
「足柄山の天狗さん」の話は村でも有名だったから、天狗さんならどこへ来るのもわけないだろう、不思議じゃあねえ、と。
祖母を帰してくれる時、白い装束の男は「もう来たらいけないよ」と言っていたそうだ。
なんでか、白い装束ははっきりと覚えているのに、顔をよく覚えていないらしい。
多分、知らずと「入っちゃいけない道」に入ったか「登っちゃいけない木」に登ったかしたんだなと祖母は笑っていた。
その後肺を病んで、医者に「20歳まで生きない」と言われたけど、80を過ぎる大往生だったりと、色々とすごい祖母だった。
祖母の祖父が亡くなってからというもの、偉いさんだったはずの一家はバラバラになってしまったから、その頃の話を聞ける親戚はいない。
もっと色々聞いておけばよかったと、今になって思う。
 
861 名前:名無しの霊体験[] 投稿日:2016/06/15(水) 01:04:01.82 ID:JsPjGtB4O
>>860懐かしい良い話ですね。
もっと聞きたいです。
 
862 名前:860[sage] 投稿日:2016/06/15(水) 17:24:19.49 ID:tXpWvryDs
>>861
ありがとう。良い話って言ってもらって祖母も喜んでると思う。村の話をする時の婆ちゃんは本当に楽しそうだったんだ。
けどそれから山ではほとんど遊ばなくなったそうだから、他にそれっぽい話はないんだ…申し訳ない。
ただ、祖母のいとこが、「お狐さんの子と遊んだ」と言っていたのを聞いたって、話してたかなあ。
でも詳しいことは話してもらえなかったって。
多分、お狐さんと何か約束をして、人に話しちゃいけなかったんだろって言ってたよ。
でも祖母のいとこの家は、現実的というか…人買いか人さらいだったんじゃないかってずいぶんと子供を問い詰めたらしい。
祖母の祖父が出て行って、話をおさめたそうだけどね。
祖母の祖父は、近辺の花街でも、ある程度顔が知れてたようで…さすがにそこの血縁を買うなりさらうなり考えるようなうつけはおらんだろ、と。

あとは、孫の俺と同じく夢のお告げとか夢枕の話とか、亡くした娘(俺の叔母)と話がしたいと、イタコさんをお願いした話があるくらいかなあ。
 
864 名前:名無しの霊体験[] 投稿日:2016/06/17(金) 19:24:07.35 ID:O1RMnVP5O
>>862気になりますね。是非、イタコさんにお願いした話をお願いします。
 

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