139 名前:名無しの霊体験[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 12:16:30.56 ID:BWOOgeO00
私は、毎回夢の様なものの話をさせて頂いている者です。
今でも妙な夢擬きをよく見るのですが、
今回はそれではなく、現実での体験をと思いまして。
話の腰を折ってしまったなら、申し訳ない。
またしても連投となりますが、お付き合い頂ければ幸いです。


今年の、残暑厳しき某日。
気温は夏と変わらず、しかし夜7時を過ぎると辺りは薄暗い。
そんな微妙な季節の事。

その日は母と二人、近所の雑貨店へ向かいました。
母はいつも、どの店でもそのまま目的の売り場へ行き、
私は入り口辺りでカゴを取ってからその後を追うのですが、
美味しそうなお菓子に気を取られていたら、母を見失いまして。

しかしそれほど大きな店ではないし、買う物も知っているので、
探すのは大変な事ではない、と思い至り、
私は適当に店内を歩く事にしたのです。

途中、どこでも見かける黄色の小さな蝶が飛んできて、
私の抱える買い物カゴに止まりました。
あら、とは思ったものの立ち止まらなかったので、
数秒後に飛んでいってしまったのですが。
 
140 名前:名無しの霊体験[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 12:16:48.30 ID:BWOOgeO00
買う物は洗濯洗剤だったので、その売り場へ向かったのですが、
母の姿はありません。
いつも買うのはどれだったかと眺めていたら、
ふと視界を蝶が横切りました。
大きさは先の黄色のと大して変わらず、しかし色は地味な灰。
だのに目を離せない……文字通り『目を奪われた』状態になり、
私はその蝶が天井付近まで舞い上がり、私の斜め上で旋回するのを、
ただじっと眺めていました。

するとふと、これは手に止まる、と思ったのです。
否、思ったと言うより、そうなると決まっている、という感じで、
「手を出したらそれに止まる」のではなく、
「止まるのだから手を出しておかないと」という感覚です。
呼吸と同じくらい無意識に、気づいたら片手が上がっていました。

肩ぐらいまで上げた片手の、人差し指を軽く立てると、
旋回をやめた蝶はゆっくりと、しかし私の指まっしぐら。
指に気づいたというよりも、やっとか、という感じでした。

「蝶が止まった人は死ぬ」という様な話をどこかで読んだな、と
思い出すも、手を引こうなどとは欠片も考えられず。
そうするうちに、蝶は私の指まで数センチと迫り、
着地の為に足を伸ばしました。
一見すると灰色でしたが、内側は淡い紫で。
ほんのわずかに、蝶の足先が指に触れたかという瞬間。
 
141 名前:名無しの霊体験[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 12:17:10.47 ID:BWOOgeO00
ばちんっ、と横から手をはたかれて、私は我に返りました。
着地地点を失った蝶は、またふわふわと舞い上がり、去って行きます。
――私の手をはたいたのは、どこからか現れた母のようで。
しかし何事もなかったかのように、手にした2種類の洗濯洗剤を見せ、
どちらが良いかと尋ねてくるのです。
別段怒っている様子でもなく、本当に普通の態度だったので、
私も理由を聞きそびれ、そのままでした。

実はこの一件の数日前、自宅周辺で蝶が死んでいく様子を見かけまして。
綺麗な青い蝶だったのですが、暑さにやられたのか、寿命だったのか。
まだ強い日差しの中、誰もいない開けた行き止まりで、
ふわふわと旋回する青い蝶は幻想的で、心を奪われたのを覚えています。
何度か墜落しては持ち直していたのですが、とうとう動かなくなり、
近寄って見ると息絶えた様子でした。

私は、その羽がアスファルトで灼けると思うと、とても勿体なく感じ、
すぐに自宅の日陰に移したのです。
まだ生きていたらとも思ったので、少し地面を濡らし、家を空けました。
帰った時には水も蝶も、跡形もなかったのですが……
その蝶の写真を用意しようと思い、しかし名前もわからない蝶なので、
グーグル先生にお聞きしたのですが、私では駄目でした。
言葉で説明するならば、見た目は大きさがCDほどで、
ナミアゲハの黒以外の部分を、ユリシスの青で埋め尽くした、
まるで色硝子のように煌めく美しい蝶でした。
――何を申し上げたいかというと。
あれほど美しくなくとも、黒一色だとか、優雅な形だとか、
何かしら雰囲気の出る蝶にお越し願いたかったという事です……

それはともかく。
手をはたかれた一件から数日して、ふとそれを思い出し母に尋ねると、
そんな事は覚えていない、の一点張り。
 
142 名前:名無しの霊体験[sage] 投稿日:2012/11/27(火) 12:17:42.90 ID:BWOOgeO00
――実は母は、見えていた人なのだそうで。
しかし私を産んでから見なくなったらしく、見たと言っても人魂と、
後は祖父の虫の知らせの話しかしてくれないので、半信半疑でした。
ところが先日、私が「お化け屋敷が嫌い」という話をしたら、
怒ったように同意して、

「あれは汚ない、汚すぎる。血やら傷やら、服もボロボロ。
格好は普通だし、ちょっと顔色悪いかなーぐらいだというのに」

とぶつぶつ。それから、しまったという顔で目を逸らしました。
人魂以外見てるよね。見てますよね絶対。ねぇちょっと。
そんな母の事なので、実はあの蝶に何かを見たのかもと、
そして私を助けてくれたのかもと、今では思っています。
だからたとえ『蝶はお迎え』という話をしたら、いわゆるドヤ顔で、
私に感謝してもいいんだぞ、と母が返してきたとしても、
イラッ★として圧縮ハグを仕掛けたりはしませんとも、ええ。


以前に、車を運転中、歩道で座り込みガードレールに寄りかかる、
えらく具合の悪そうなスーツの女性を見かけたのですが、
母にはあんな感じで見えるのでしょうか。
見た目の割に、女性の周辺にいる人達が無関心すぎたので、
不審に思ってそのまま通り過ぎ、
ちらっとバックミラーで確認したらいらっしゃらなかったので、
あまり気にしていなかったのです。

なにせ私、夢擬き以外には何も見た事がありませんので、
素敵な見間違いだとばかり。
あれだったら、うっかり声を掛けてしまいますよ。反則だ。


これで今回の話は終わりとなりますが、相変わらず文才が無い為に、
このような長文及び乱文となりました事をお詫び申し上げるとともに、
まとまりのない話を読んで下さった皆様に、感謝申し上げます。
 
146 名前:名無しの霊体験[sage] 投稿日:2012/11/28(水) 10:53:05.88 ID:1e5bY/T/0
蝶や昆虫の不思議や怪異の体験談は
松谷みよ子の「異界からのサイン」や「現代民話考」でも少し触れられてるね。

ともすれば胡散臭く聞こえる話も筆者が人から聞いた話から
場所と時系列、実際に起こった出来事を抽出、
更に別の類似体験談を並べることによってほんのり
そういうこともあるかな、あってもいいかなと思わせる何かがあるのが良かった。

体験談って本人の我が出ると、そっちのが強くて事象がうやむやになっちゃうケースが多い。
私情を極力排して客観的に淡々と書く方が他人には受け入れやすいかも。

一概にこうとは言えないけど、
びっくりしたからガーッと書き込む、ってのも臨場感があっていいってケースもあるし。
 

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